【徹底比較】幼稚園バス置き去り対策|各装置のメリット・デメリット
(本ブログは「国土交通省バス置き去り防止装置のガイドライン」が公表される前の記事です。)
2022年9月、静岡県牧之原市の幼稚園で、3歳の女児が送迎バスに置き去りにされ死亡した事故。亡くなった女児がどんな辛い思いをしたか。
事故の後、連日テレビやネットニュースで対策システムが紹介されていましたが、その多くはメリットしか報じられていないので、私見ではありますが、忖度無しでデメリットも並べてみました。選定において少しでもご参考になればと思います。
1.クラクション
クラクションは、最も知られている置き去り防止システムです。
大きな音を発信して、周りの大人に異変を知らせます。しかし下の写真を見れば分かるとおり、園児にとってクラクションを押すことは容易ではありません。
更にクラクションの大きな音が故に、近隣を驚かせることもあります。
幼稚園の職員は、私たちが思っている以上に、近隣に対して園内の騒音のことに気を遣っています。
クラクションは暫定的な方法でしかない、というのが私の率直な意見です。
クラクションのメリット
- どのバスにも最初から備わっている。
- 押すだけの力さえあれば、園児にとって操作が簡単である。
- バッテリーの消費電力は僅か。
クラクションのデメリット
- 固くて園児が押せないこともある。
- 近隣への配慮が必要で、十分な訓練をすることができない。
- せっかく押しても気づかれないこともある。
↓簡単な改造で簡単に押せる装置も登場!
クラクションを導入する前に確認すべきこと
- 押した時、クラクションの音が職員室に届くか。
- クラクションは園児でも押せるタイプか。
2. 運転手が降車時確認するシステム
下記の写真はよくテレビで紹介されていたものです。
(画面にある「水筒は空っぽ」は本当に涙が出ます。)
これはヒューマンエラーを無くし、置き去りを解決できる装置であると強く感じます。
ただ、実装するおいては、シリンダーなど専門性の高い部分の改造が必要です。
当社が開発した装置は、これを取り付けやすくして、更に応用させたものです。
(>>詳しくはコチラ)
運転手が降車時確認するシステムのメリット
- 運転手は必ずバスの最後部に行かなければならない。(ヒューマンエラーを防止)
- バッテリーの消費電力は僅か。
運転手が降車時確認するシステムのデメリット
- 大がかりな改造が必要になることも。
- 運転手が(考え事などをしていて)ブザーに気づかずに降車した時の対策が無いものもある。
導入する前に確認すべきこと
- 既存のバスに導入できるか。
3.人感センサー
人感センサーはよくネットニュースで取り上げられています。これは万全でしょうか?
人感センサーは誤作動(誤反応)があります。
しかもバスの中には、「消毒」「点検」「清掃」「忘れ物の捜索」などで職員が意外と出入りをするのです。
センサーだと、上の写真のように、職員が入った時点でセンサーが反応してしまいます。
この時、センサーを切らざるを得ません。切ったら今度は必ず入れないといけません。
”切り忘れ” や ”誤発報” が増えると、発報が全てオオカミ少年になってしまいます。
オオカミ少年については、下記のニッセー防災社(静岡県)のブログもご覧ください。
(>>ニッセー防災社のブログ)
人感センサーのメリット
- 人が閉じ込められていることをリアルタイムで通知できる。
人感センサーのデメリット
- 故障に気づきにくい。(事故が起こってから故障に気づくこともあり得る。)
- 職員にも反応するので、一時的に切らざるを得ない→入れ忘れる。
- 切るのを忘れると→オオカミ少年がおこる。
人感センサーを導入する前に確認すべきこと
- 切らずに運用できるかどうか。
- 長期間放置してもバッテリー切れにならないか。
4. ライブカメラ
ライブカメラも誰もが思いつく「置き去り防止策」の1つです。万全に感じますが、果たしてどうでしょうか?
「“防犯装置” を置き去り防止装置として使うのは、あまり賢明でない。」というのが私の考えです。
なぜなら保護者は、「うちの子ちゃんと降りたかしら。カメラで確認しよう。」と、能動的に見に行かないといけないからです。
それを回避するために、センサーと併用しているものもありますが・・・。そうです。前述のとおり、センサーと併用しても結局オオカミ少年になるのです。
それと忘れてならないのは、バスの置き去り事故は、エンジンを切った車中で起こっています。
この時の電源は「車載バッテリーのみ」。発電はしていません。
一方、カメラの映像をライブ配信するには、「カメラ」「ルーター」「発信器」「センサー」など、様々な機材を必要とするので、当然消費電力も大きくなります。
にも拘わらず幼稚園の送迎バスは、低速で近隣しか走らないため、十分に充電されないまま園に戻っている可能性が高いのです。
カメラの導入を検討されている幼稚園の方は、バッテリー上がりについて確認して下さい。
カメラ(ライブ配信)のメリット
- 中の様子をリアルタイムで知る事ができる。
カメラ(ライブ配信)のデメリット
- 「能動的」にアクセスするまで誰も気づかない。
- センサーと併用する方法もあるが、結果オオカミ少年になることも。
カメラ(ライブ配信)を導入する前に確認すべきこと
- 園児が閉じ込められたことを「受動的に」知る機構であるか?
- バッテリーはちゃんと持つか?
5. 顔認証
顔認証も時々テレビやネットニュースでよく取り上げられています。iPadの顔認証アプリを使って、園児の降車を保護者に知らせます。
多くの顔認証システムはオンラインで行っています。つまりiPadがインターネットに接続している環境でなければ利用できません。
顔認証のメリット
- 園児が降車したことをリアルタイムで通知できる。
- 履歴を後から確認することができる。
顔認証のデメリット
- Wi-Fiの電波が職員室など確実に届くところで顔認証作業を行わなければならない。
- SIMモデルだと月額料金がかかる。
- 職員の負担が大きい。
顔認証を導入する前に確認すべきこと
- 職員の操作が面倒でないか?
- 電波はちゃんと届くか?
まとめ
いかがでしたでしょうか?命を守るシステムである以上、デメリットも忖度無しで列挙しました。
バスの中の電気を自由に使えるなら、あらゆるシステムを投入できます。しかしバスには限られた容量のバッテリーしかありません。
「そうだ、今日から車内のシステムをオフにしょう。」こういった装置は、意味がないと考えています。
バスにおいて、安全システムが来年から義務化される中、少しでも参考になれば幸いです。